不動産業界の
古い「枠」を取り壊して、
新しい「門」となる。
It will be a new "gate" by demolishing the old "frame" of the real estate industry.

BLOG
8月8日
2022
不動産実務~離婚と仮処分~

◆仮処分の察知

 

こんにちは。
㈱REGATEの金城です。

本日のコラムテーマ
不動産実務~離婚と仮処分~
です。

今回は不動産実務のドキュメント形式でお送りします。

 

不動産の実務をやっていると切っても切れないモノがあります。

「離婚」

 

今日はこの離婚案件でも少し特殊なヤツをご紹介したいと思い筆を執りました。

 

 

ちょっとややこしい案件ですがいい経験になったので、不動産の実務をやっている人はケーススタディとして読んでみてください。

 

ではど~ぞ~

 

◆売却済みの土地のすぐ近く

 

南城市の海が近い平坦地。
相続の相談から売却に繋がった案件でした。
当時はコロナも無く沖縄のリゾート物件は軒並みバブル状態。

結構な田舎の土地で近隣の取引事例など参考になるものが少なく、売却査定をするにも手探り状態。

参考価格をはじき出し、売主さんの意向も含めての売却価格決定。
幸いなことに売り出しをしてすぐに買い手がつきました。

問い合わせも多く二番手も三番手も付く状態でした。
あまりにも早く売れたので
「少し安かった?」
という疑念は残しつつも売主さんも喜んでくれているので万事OK。

引き渡し決済を終え安堵していたところ
この売却物件の道向かいの土地の地主から電話が・・・

「いい予感がする!」

すぐさま対応して面談を取り付けたところ予感は的中♪

「売り出されている看板を見ていて気になっていた。
あの価格で売れるなら私の土地も売ってほしい。」

との事。
——————————-
不動産屋あるあるですが
一度売却調査をした土地の周辺は売りやすくなります。
理由として
・担当者がそのエリアの調査を終え熟知している事
・販売中に来た問い合わせの客層を把握
・現地案内などの際に周辺状況も熟知

というプラス要因が重なる事で
「一度売った物件の近隣物件は絶対売れる」
という確信も持てるんですよね。
——————————-

自信満々に
「買いたい人もいますしすぐに売れます!安心してください!」
と返事をして早速調査へ。

いくら道向かいとはいえ、実際に登記簿謄本を取り寄せ調査をしないといけません。
(道向かいの行政区が違っていて都市計画が全く違うという事もよくあるので。。。)

役所調査を順当に終え、以前に売却した土地と同等の条件で売れると確信。
登記簿には抵当権などの債務も無し。
二番手と三番手のお客様に紹介すれば直ぐに契約できそう♪
意気揚々と調査を終え、売主さんの売却の最終確認のために媒介契約書を作成し再面談。

順風満帆♪

 

・・・に思えたのですが。。。

 

 

◆Aさんの隠し事

 

今回の売主はAさん。
昔は教員をしていて教頭先生まで勤め上げたそうです。

今回売りたいという土地は20年以上前に相続で取得した土地。
Aさんは少し離れたところにローンを完済した戸建てを所有していてこの土地を利用する予定も無し。
一人息子も東京で所帯を持ち、帰ってくる見込みもない。

教員だったこともあり手厚い年金暮らしをできているが、不要な不動産は処分をしておきたい。
息子も土地や不動産は要らないと言っている。とのこと

 

ここまではありがちな売却理由です。

そのままヒアリングを進めていると

奥さんは少し前に出ていって離婚協議中。
金銭関係で揉めての熟年離婚という事。。。

とにかく早く売買を進めて現金化を急いでほしいという感じで“焦り”が見え隠れ。。。

私はこの時に
「?」
と疑問を持ちました。

不動産の売却理由に熟年離婚はよくあります。
子育てを終えた奥さんが旦那さんに愛想をつかして出ていくという定番の熟年離婚もあるし、
仕事を終えて夫婦の時間が増えることによる家庭不和もよくあります。

Aさんの理由は家庭不和ではあっても「金銭関係」という事がネックらしい、、、
現段階で現金化を急ぐ理由がよく分かりません。
普通ならスルーしそうな感じでしたが、なぜか私には深く引っ掛かるものがありました。

Aさんは持ち家のローンも完済していて共済年金も受け取れる元公務員。
普通の人よりも多くの年金を受け取れるのに金銭関係で揉めて離婚??
見た感じ金遣いが荒いような身なりをしているわけでも無いし、車も古いカローラ。。。
取り合えず私は謄本には記載されていない債務があるんだと目星を付けました。

 

Aさんの気を悪くしないように慎重にヒアリングを続行。

今回もAさんに気を使いながら周辺の人間関係を聞き出し「気になる点」を浮き彫りにしていくことに・・・

一時間ほど話を聞いて人間関係と金銭関係の問題の内訳を聞き出すことに成功。

私の悪い予想はおおむねビンゴ♪

定年退職後に昔ながらの教え子がコンサルをする資産運用に手を出した。
FXか先物か暗号通貨かは教えてくれませんでしたが、その類であることは間違いなさそう。

レバレッジを効かせた運用は、当初は順調に滑り出したが徐々に雲行きが怪しくなり追証を重ねるように・・・

よくありがちな定年後の資産運用アドバイスに順調に引っ掛かったという感じですね。
直ぐに退職金は底を尽き、毎月の年金もあてがう始末。

そしてこれが奥さんに内緒で始めたのでバレてからが大変。。。
言い訳もできずに取り返しがつかなくなったとのこと。

ここまでの状況をまとめると
——————–
買い手さんはほぼ決まっている。
恩師を騙す悪い教え子がいる。
退職金もほとんど追証に使っちゃった。
愛想をつかした奥さんと離婚協議中。
——————–
という感じです・・・

Aさんは売買を早く急いでくれと懇願しましたが、
私は一度立ち止まって奥さんとも話をする機会を設けました。。。

 

◆財産分与と仮処分

 

登場人物のどちらかに感情が偏ると売買は上手くまとめきれません。
という事でできるだけ感情移入をせずに物事を分解して考えてみました。
※後日奥さんとも別個で面談をしたので、それらを踏まえての結果をまとめます。

まず離婚を理由として不動産を売却するという相談を受けた時に必ずチェックすることに「財産分与の協議」があります。

婚姻中の資産は
夫婦共有の財産として折半することが基本
となっていて、そこに慰謝料や諸々の事情を勘案して財産の取り分を変えていく作業が必要です。
不倫や浮気が原因で離婚する時はされた相手方に慰謝料として財産を持っていかれることが多いです。

借金やローンがある場合はそれらの債務を弁済してから余った分を夫婦で分けます。

DVなどが理由の場合、奥さんや旦那さんが「離婚さえできれば財産は要らない。とにかく離れたい」と言って分与をしないケースもよくあります。

また、この分割協議の折り合いがつかずにいつまでも離婚できないご夫婦もいます。。。

今回のケースでは分与できる財産を考えた時に少し厄介なものがありました。
Aさんが多額の資金を投下した「投資の運用資金」です。

現段階ではマイナスと評価されていてどんどん追証を支払う状況。
奥さんとしては失ってしまった退職金も財産分与に含めて請求したいとのこと。。。
原則は減った分も共有財産ですが、奥さんはそれでは納得できないとご立腹。

このマイナスになった資産をどこで切るかが重要ですが、Aさんは損切をしたくないという意向で、追証の支払いのために土地を売りたいという考えが強い事が判明。
典型的な投資の落とし穴にハマっています。。。
(投資というよりバカラとか丁半博打のようなギャンブルですが・・・)

 

離婚をする奥さんからすると勝手に投資して失敗したのに、土地を売ってそのお金で更に追証を払うのは到底納得できない。
まずはこの資産運用をやめない事には財産分与の協議もまとまりそうにありません。

離婚をすることが確定している状態で、夫婦共有の財産を片方が一方的に処分する行為は禁止されています。
案の定、奥さんが先回りをして家庭裁判所に「処分禁止の仮処分を申し立て」を予定している事も判明。

Aさんはそれを察知して差し押さえされる前に売却をしたいという事で動き出したそうです。

そこでまず私が取り掛かる仕事はAさんに投資をやめさせて(損切を決心させて)、土地と自宅を売却させて、今までの損失を含めて奥様との離婚協議をまとめる事が最優先の仕事になりました。。。

 

◆頑固なAさんを説得できず・・・

 

あの手この手で説得を続けましたが、教頭先生まで勤め上げたAさんはなかなか頑固。。。
しまいには
「お前のような不動産屋に何が分かる!」
「投資はまだまだ始めたばかり!最初は上手くいっていたから口出しするな!」
「今から値上がりする可能性の方が高いんだ!」
「私は今まで何人も優秀な生徒を教えて有名な大学に送り出した!」
「不動産屋は売れと言われたら売ればいい!余計なことに口を出すな!」
と激昂する始末・・・

その優秀な教え子に人生めちゃくちゃにされていますよ。。。と心の中でつぶやきましたがwww

もうこうなったら我々不動産屋の出る幕はありません。

買主がほぼ決まっている状態でもあったので、この事実を知りながらも仮処分の登記をされる前に引き渡し決済をすることはできると思います。

でも売買契約を無理やりまとめたところで、買主さんにもご迷惑をかける可能性が高い。
仮処分禁止の登記と売買の所有権移転登記の早い者勝ちの勝負になりますが、そんな一か八かの勝負に買主さんを巻き込むわけにはいきません。
何よりも事情を知った私が善意の第三者では無くなるし、買主さんにこれを告げないのは道義上NGな事は間違いないですし・・・

という至極まともな事を理由として並べていますが

「こんなわからずやの教頭の力になりたくない」

という私の本音でこのお話をお断りしましたwww

今回のケースは抵当権の無い隠れた債務に気が付けたパターンです。
Aさんのいう事だけを鵜呑みにして売買を進めていたら引き渡しの直前にいきなり処分禁止の仮処分登記をされていたかもしれません。

 

Aさんに手付金を渡してしまったらすぐに追証に使っていたことも想像に容易いです。
また、処分禁止の仮処分のせいで売買をストップ、若しくはAさんの債務不履行で解除をできていたとしても、Aさんから手付金を回収できたかどうか・・・

そのまま進めていた場合は仲介をする不動産屋に事実を話さなかったAさんが悪いのか、
そこまでの事情を察知できなかった仲介業者に責任が行くのか?
ま、どっちも悪くて買主さんに迷惑がかかる可能性は100%ですね・・・

そんな取引をできるはずもありません。

 

今回のケースは事前に察知することで面倒なトラブルに巻き込まれるのを回避できたケースでした。
気が付かずに話を進めてしまってたら、後のトラブル処理に多大な時間を費やすことになった事でしょう。

当初のヒアリングから奥さんとの話し合いまでに結構な時間をかけてしまって結局お金にはなりませんでしたが、何かといい勉強をさせてもらったと思って感謝しています。

 

細かい違和感から先のトラブルを予知、それが杞憂に終わればそれに越したことはありませんが、気が付かずに取引を進めると必ず大きなトラブルとなって返って来るのが不動産というモノです。。。

 

 

不動産仲介をやっているといろんな人に出会えます。
不動産の売り買いを仲介するだけではなく、
トラブルのない売買を成立させる事
が私たちプロの仕事だと自負しています。

また、トラブルが無い取引を実現するために
まず最初に「信用と信頼」が築けないといい取引はできません。
頭が固くなって横暴な態度で食ってかかると不動産屋さんは協力しなくなります。

これを読んだ人はこれからは不動産屋さんにやさしくしてあげてくださいwww

 

強引な締め方ですがこの辺で。

 

では~

—————————————-
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この記事を書いた人

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お孫さんの代までお付き合いできる不動産屋さんとして「紹介率No1」を目指します。
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